歪曲する世界は矛盾だらけだった。
一つ一つが結びつかない。しかし、何故か自分はそこにいた。
辻褄が合わないことなど自分は気にも留めず、ただあてがわれたシチュエーションに則って、あくまでも、自分の意思で行動していたように思う。しかしそれは何処か矢張り傀儡じみていて、それに気がつくのはいつだって、朝なのだ。
夢を見るということは、自分ではない自分を知るときなのかもしれない。
何の前触れも無く目が覚めて、何の前触れも無く起きた。
それは、つまるところ飛び起きたというのだ。
ぜいぜいと肩で息をした。朝の日差しはカーテンによって阻まれていて、それでも風にそよぐその裾野からちろちろと静謐な光を零している。
気温はやや低い。
しかし頬を伝った汗は、上下して止まない肩は、ばくばくと鳴り止まない心臓は。
「・・・・・・」
唐突に覚醒した脳が夢と現実の間を行き来する。これは夢か? 否、これは朝だ。
目が回るような感覚の中、先ほどまでの記憶を引きずり出して反芻する。
それは、つまり、・・・・・・いやしかし。
思い出そうとすればするほど自分が嫌いになっていく。ひょっとして、それが深層心理だったのだろうかと、自問自答しようとして答えが出るのが怖くなってやめた。
夢の中で彼女は、
いや自分は。
口元を覆ったのは、こみ上げる吐き気のせいだった。自分は半分が人間で、それは例えば風邪を引いたりだとか、銃創よりも足の小指をチェストの角にぶつけた時の方が痛かったりだとか、そういう感覚で。
何処かで自分と回りは違うと言う認識が自分の中の願望までも歪曲させたのか。
「違う、違うんだ。俺は、・・・」
言い訳じみている。
夢を見た、それだけに対して言い訳を講じる必要は無いとは、理解しているが。
濡れた瞳。
大きな唇。
やたら鮮明に映ったその影。
彼女に、俺は、何を。
「違う。俺はただ」
近くいいられればそれでいいと思っていた。そう思っていると信じていた。
人間でない自分が人間と同じにはなれぬと、それを超える力を持つほどまだ自分は強くないと、分かっているからこその自制であったのに。
毛布を握り締める手に力が篭った。それだけでは足りなくて、膝を抱えた。
すまない、と何度も繰り返した。
***
おとこのこ だからね!