生きる意味を探す。それが生きる意味であった。

 

それが人間であると思っていた。

 

しかし他人に自分を中ててみて初めて自分を知ることが出来る。

 

他人を通してでしか自分を測ることが出来ないなんて、なんてかなしいんだろう。

 

 

 

 

 

 

   

なんてむなしいんだろう。

 

 

 

 

 

 

 

 

「ふーん。そういうことをよく考えてるんだ」

「そう」

西日の厳しい日差しの中、二人の女子高生が下校している。

一人はまるで男のようなショートヘアの快活そうな少女。宮元なつめ。ミヤと呼ばれている。

そしてもう一人は髪を背まで伸ばした、どこかぼうっとした少女。黒瀬しずか。クロと呼ばれている。

「クロさんは難しいことを考えるんだねえ」

わたし、そういうことあんまり考えたことないかも。

ミヤはそう言ってコンビニで買ったコーラをごくごくと飲んだ。

「考えるというか、そういうのがふっと思いつくの」

「思いつくのがすごいよ」

「ミヤは明るい方がいいよ」

「それって馬鹿ってことー?」

「ふふふ。でもミヤは友達多いし、私はそういうほうがいいと思う」

「友達はみんな好きだよ」

皆好き。ミヤは繰り返した。強調するように、言い聞かせるように。

「でもわたし、ばかだからなー」

「テストの点数で頭が悪いとか良いとかなんて目安でしかないよ。例えば、すごくやりたいことがあるならそれをやればいいし、それをするために勉強が必要なら勉強すればいいし」

「何もやることがないっていう人のほうが、多いよ」

「そうだね。でもとりあえず皆手を動かしてる。分かんないけど、でもやっておいた方がいいってことは知ってるから」

「本当に真面目に立ち止まって考えてる人はどんどん取り残されてっちゃうんだね」

よくわからない漠然とした、何か。

それがいつか見えるときが来るから、その時の為に意味が無いかもしれないことをする。

霧はいつか晴れるから、と。

いつ晴れるかは分からないけれど。

わたしは置いてかれちゃった方だな、とミヤがぽつりと呟いた。

わたしも、とクロが言った。

「わかんないよね。そんなこと」

「部活もしなさい。勉強もしなさい。未来のことを考えなさい。でも遊びなさい。なんてズルイね。自分はそんな完璧に出来たの?って聞いてみたい」

「ねえ、クロさんは大学に行くの?」

「行くね」

「わたしも行くよ」

「うん」

「サークル入って勉強とか全然しないで超遊びまくる!」

「ミヤらしい大学生活だ」

「ぎゃはは」

 

 

 

 

 

 

 

 

生きる意味を探す。それが生きる意味であった。

 

それが人間であると思っていた。

 

しかし他人に自分を中ててみて初めて自分を知ることが出来る。

 

他人を通してでしか自分を測ることが出来ないなんて、なんてかなしいんだろう。

 

それでもわたしたちは誰かがいなければ生きてはいけないのだ。

 

一人きりでは笑うことも怒ることも悲しむことも楽しむことも出来はしないのだ。

 

この飢えと乾きを抱いては何人たりとも生きては行けぬ。

 

 

 

 

 

 

 

西日の厳しい日差しの中、二人の女子高生が笑いながら下校していく。

黒く深い影法師が二つ、二人の下で泣いていた。

 

 

END

 

多感すぎるが故。