A thread is cut very easily.

Will I arrive at you if I pull in a thread connected earlier of darkness?



改造したキャリコM100が銃弾を吐き散らす。アサルトウエポン規制法などという高尚な法律はこの業界では無に等しい。
螺旋状にストックされた弾倉、.22LR弾が100発装填されている。
それを戦場もかくやという思い切りで弾き出しているのだから自由と民主もなにもない。
そういう世界なのだ。
あっという間に弾を使い果たし、新しいヘリカルマガジンを突っ込む。
そしてまた打つ。
ビル風が強い。突風でバランスが崩れる事を懸念してしまう。
間合いを詰めてきた一匹の悪魔に銃身で応戦し素早く左手でベレッタM92を抜き放ってゼロ距離射撃。即座に砂へ還す。
水平に薙がれた鎌を除け、バック転で間合いを取った。素早くベレッタを収めてまたキャリコを歌わせる。
空気が張っている。
瘴気に塗れているこういった空間は確かに歪曲して入るものの、こんなにも張り詰めてはいない。
顔を引っ張られているような不快感。
一瞬たりとも気を抜いてはいけない氷のような。まるで、
「馬鹿が余計なこと言うから!」
考えそうになる頭に強制終了を掛ける。
腰を折って横薙ぎをかわし、ブーツの底で思い切り蹴り上げた。大きく仰け反った頭を今度は両足で挟んで、捻りながら投げる。頭と胴体が分離した。胴体の方は別の一匹にぶち当たってもみくちゃになりながらフェンスを巻き込み落下していった。いい気味だ。
流れに沿って身を起こし、振り返りもせずにモーゼルHScの引き金を抜いた。
のっぺりとした年代モノのフォルムがお気に入り。
気がつけばビルの上で砂が舞っているという寒々しい事態になっている。
肌が荒れそうだ。素直にそう思った。
レディはまだ街で一番高いビルの上にいる。
ダンテが去った後もその場から動こうとしなかった。
ただ、月を見ていた。
雲がないからとても明るい。クレーターまで見えるのではないだろうか、というほどに。
しかし目を凝らそうとした瞬間猛烈なさっきに見舞われて、彼女は大きく飛び退いた。
何処からか半魔の残滓を嗅ぎ付けた悪魔たちが寄ってきてしまったのである。つくづく嫌な男だ。
金にならないハントはあれ以来やらないって決めたのに。
口に出して毒づくほどの事ではないが。
ゴウ、と不意に襲った突風。
飛ばされまいとして足を踏ん張るが少しよろめいた。危ない。
フェンスはない。だから突風が吹いたら飛ばされてしまう。カリーナには頑丈なワイヤーが装備されているが、うまくフックをかけなければ意味はない。ワイヤーはあくまで金属製であって蜘蛛の糸などではないのだから。
自分は純然たる人間だから落ちたらありとあらゆる臓器を他人に曝すことになるだろう。
それは嫌だった。
迷惑も掛かるし。
張り詰めた空気が調子を狂わせる。
分散した注意力は足音の無いモノを背後に侍らせてしまう。
黒いボロ衣、面の裏の青い炎、鈍色を放つ大鎌。
月は血を恐れて雲に隠れ、その影も消す。
全てが悪い方に作用したと言っていい。
鎌がその心臓を捕らえる僅かばかり前に、レディは地を蹴った。
宙返りをしながらモーセルを噴かす。カリーナは、地に刺さったままだった。
フェンスの無い、あまりにも低い死の敷居。
ギリギリコンクリートの淵に足がかかり、しめたとばかりに踏ん張った。ここで死んではいけない。まだあの可愛らしいカフェに行ってない。楽しい思い出を作っていない。
会いたい。
「…は?」
自分の考えた事に戦慄した。自分は今何を考えたのだろう。



突風が、吹いた。