You were hurt than I thought.

And I starved for love than you thought.



「変わった」
「アンタは全然変わらないわ」
「髪が伸びた」
「そうね」
「傷も増えた」
「…そうね」傷は消えない。鼻頭を筆頭に、様々な傷が痕になっている。それは致し方ないことだし、今更疎ましいとも思わない。「アンタは本当に変わってないわね」
「時間が止まっていたんだ。その間の記憶は無い」
「アイツが喜んだでしょう」
「弟のくせに老けていた」
「気に食わない?」
「そうでもない。だが老けた弟に兄扱いされるのが不思議だ」
薄桃の花の中二人で寝そべって空を見ている。
堕ちてきたときに開けた天井から月が見える。天井はもともと硝子製だったから、月の周りだけややぼやけた様に見える。
「しばらくアイツの家にいるの?」
「しばらくどころかずっといることになるだろうな」
不思議だ。
何もやることが無いのに。
何も思わないのに。
それでも楽しい。
「毎日は単調だがな」
それでも楽しいのだとバージルが言った。
「前言撤回」
「何?」
「やっぱりアンタも変わったわ」
泣く事も無くなったけど笑うことも少なくなった。
摩滅していく心はお互い様だ。
レディは自然な笑みを浮かべた。
「目がさ、優しくなったわよ」
横目でレディを見て、再び視線を上へ。
「そうか」
口角が少し上がっている事を自覚してなんだか恥ずかしい。
それが何を意味するのか、そこに思い至らないで欲しい。是非とも、永遠に。
レディが身を起こした。バージルもそれに倣う。
そこではたと、バージルは気付いた。
「これは…ニコチアナか!」
「ニコチン?」
「Flowering Tobacco Plant。ハナタバコという」
「タバコの花なのね」
バージルはそのうちの一つを手折った。薄桃色に隠れた、白いハナタバコ。
レディはその花弁を凝視したまま口に手を当て考え事をしている彼に訝しの眼差しを送る。
何かに思い至ったのか、バージルはそのままレディの前に花を翳した。
「やろう」
「アンタね…その辺の花千切ってくれる奴があるか!…って、ちょっと!」
バージルはそ知らぬ顔で花を握らせた。
「命を摘んで与えるには変わりない。何よりこの花だから意味がある」
淡々とそんなことを言われたって、困る。
いや、ちょっと待って。
「…意味って?」
「質問が多い女だ」
「あのねぇ、」
「言うと野暮になりそうだからやめておく」
「!」この、悪魔どもめ。「死ね!」
「何故」





Because the door was shut, I cannot feel you.
扉は閉じたまま、貴方を感じられない。

Emptiness is canceled in every day, too, and loneliness fades away, too.
寂しさも空しさも毎日に流されて消えてしまう。

A thread is cut very easily.
いともたやすく糸は切れる。

Will I arrive at you if I pull in a thread connected earlier of darkness?
闇の先に繋がったこれを手繰ったら貴方に行き着くのだろうか。

If I had a wing, I will go to meet you very first.
もし翼があったなら一番に貴方に会いに行くのに。

Though there is a foot to me, I cannot think this place to be not separated by water with the future.
私には足があるけれど、この場所が未来と陸続きだとは思えない。

You were hurt than I thought.
私が思っている以上に貴方は傷ついていた。

And I starved for love than you thought.
そして貴方が思っている以上に私は愛に飢えていた。

A wound and a crime and punishment. You say only such a thing.
傷と罪と罰。そんな事ばかり言う。

Morning and the future and light. I say to you many times.
朝と未来と光。何度も言ってあげよう。

If there is you, I am not lonely.
君あれば淋しからず。

An important thing is a secret each other.
肝心な事は秘密のままで。





この界隈には二人の不思議な人間が居る。
鼻先1インチ先を銃弾が掠めても眉一つ動かさない通称『悪魔も泣き出す男』。
そしてもう一人、それに負けず劣らず乱暴で荒っぽくて滅法腕が立つと評判の、名無しの女。
二人は交友関係にあると言う。二人をよく知る者は必ず同じ言葉を引用する。

『類は友を呼ぶ』

二人の交友関係は、その一言に尽きるらしい。
だが実際のところ彼と彼女が頻繁に会っているということは無い。
彼らを良く知らぬ者の中には、二人は恋人関係だと推測する者もいたと言う。
しかし、その情報を握った情報屋は悉く現役引退を余儀なくされている。
何時しかゴシップは消え去り、伝説だけが残ってしまったわけである。
話が逸れた。
とにかく、男女は殆ど会うこともなく、ましてや同業のよしみで共闘するなどと言うことは無論なく、時折唐突に会い、適当に世間話に花を咲かせ、唐突に別れるのだ。



その頻度がほんの少しだけ高くなったのは、まだ誰も知らない。



Thanks 4444hits!!