トカゲの肩に乗って猫を腕に抱いて。

私はそこから見る魔界が大好きだった。














グルルと唸るブレイドの頭に肘をついてくあ、と欠伸をした。
私の頭が動いたのでシャドウがずり落ちて、毛を逆立てて怒った。
だって何もすることがない。
私は特に、何をせよとも言われたことがないので生まれた時からずっとこの調子だ。
そのうち、何かをするために存在しているのだが、私はまだそのことについてよく理解していない。
簡単に言えば、私は誰かに似せて作られている人形らしい。
けれど似たようなものは(形はどうあれ)魔界にはゴロゴロしているし、特別不思議に思うこともなかった。
ただちょっと、面倒くさいなあと思っている。そのくらいだ。
シャドウを抱えなおして、ぽんぽんとトカゲの頭を叩く。これは向こうに行きたいんだけど、という意思表示で、こいつはこれに逆らった事がなかった。
いつものように生きたい方角を指差せば、ちょっと頭を上げて指先を確認。違うの、指先から直線状に行った所に目的地があるんだけど。ブレイドは一拍置いてからああそうか、といった調子で指先をたどった。
しかし、すぐに歩き出すはずのこのトカゲは僅か三歩も進まずに足を止めた。二ギャー!と暴れてブクブクとあわ立つ猫を撫でながらどうしたの?と顔を覗き込めば、いつものギョロついた瞳が警戒の色を帯びていて。
続いて頭を上げたので危うく肩からずり落ちてしまいそうになった。
…シャドウはブクブクするのに気を取られていたので、床にベシャリと落ちて黒い水溜りを作った。
ブレイドの視線をたどって私も見上げると、遥か上空から何やら人間のようなものが急降下してきている。
ものすごい速さで落下したそれは、やはりものすごい速さで地面に激突した。

・・・・・・・・。

私とトカゲと、ようやく上ってきた猫は呆然とソイツが落ちたであろう噴煙の立ち上る位置を見た。
まず一番にブレイドが私の顔を見上げてどうしようか?と無言の質問を寄越し、シャドウが取り敢えず唸ってトゲを逆立てた。私はそんなこと言われても、という顔で二匹と顔を見合わせる。











さてどうしようか。









トリッシュは砂埃も薄くなったそこを指して、ブレイドの頭をポンポンと叩いた。














*

チビトリとトカゲとネコの話。
トリッシュはあの姿になるまでかぐや姫ばりの成長速度だといい。
ていうか散々ダンテさんが食われているネコさんは実はただの動物なんですか。(違う)