「うわああああああ!」

  ガンガンガン、と鈍い発砲音。でもそれよりも凄かった悲鳴の方が気になって顔を上げた。
調度メンテナンスが終わった象牙色の小銃にマガジンを突っ込む。ガシャン、という音がして、掃除終わり。
商売道具だから手を抜いたりはしないが、目隠ししてもタイムを落とさず解体し組み立てが出来る自信がある。
昔は無意味にそんなことに拘って色々無茶をした。今挑戦したらどうだろう。あの頃よりもいいタイムが出せるだろうか。

(恐らくは…だが今はそんなことする理由が無いな)

女は銃を怖がる。だったらこんな事は自慢にもならない。
顔は上げたものの、視線は銃から離れなかった。具合を確かめるように手の中で何度もチェックする。
もう一度マガジンを抜き、トリガーの具合を確かめようと指を掛けたところで目の前を何か青いものが素早く横切っていった。
トリガーを引く。カチンという音が鳴る。遊底が戻る。バネはもうそろそろ交換したほうがいいかもしれない。
青いものが翻る。そしてズガンズガンと二つ顔の真ん前で爆音。

「うるせえ」

「お前、あいつの相棒なんだろ?!何とかしろよ!」

「知るか」

「おい!」

「ぎゃあぎゃあ五月蝿えんだよ。騒ぐな。メンテ中だコラ」

「こっちが知るか!」

「そーいやこないだレディがエンフィールドNo.2買ったとか抜かしてたな。俺もあれ好きなんだよなー。よし、今度試し撃ちさせてもらおう」

「聞け!」

再び解体作業に入り面を下げる。
もとより視線も寄越してないから集中力の元コイツはすぐに意識の外に締め出された。

「いやぁ、トリッシュがいないと静かでいいな」

 

確信犯?老獪になったと言ってくれ。

 

 

 

「ネーロー!」

「ぎゃああああ」

「何で逃げるのよう。遊びましょーよーねーえー」

「嫌だ!あっちいけ!」

「あ、分かったわ『鬼ごっこ』ね!オーケー私ちゃんと遊び方知ってるわ!」

「違う!来るなああああ!!」

ガンガンガン!

「いーち、にーい、345678910!」

「数えんのはえーよ!」

 

 

 

***

 

キーワード:エンフィールドNo.2